モザイク造形作家の碧 亜希子さんの展示「-滞空-」は、2023年11月4日~11月26日に、京都の仁和寺にて開催されました。
ギリシャのアテネなどで制作後、現在は日本でモザイク造形作家として精力的に活動されています。本展示は作品の静謐さを感じると共に、碧さんの石そのものへのこだわりや愛情深さも感じることができました。
庭園内を広々と見渡せる白書院の畳の上に、碧さんの作品が点在しています。静かで気持ちのいい空気が通る中、間近でその繊細な配置を見ることができました。
《水紋》(2023)
こちらの展示では、実際に触れて観察することができる作品が多くあります。
美しい色が集まり、幻想的な水たまりのような存在となっていました。
細かくカットされた石たちが集まった作品は、不思議なほどに穏やかに空間とマッチしており時間を忘れてしまいそうです。
それぞれの作品が淡い色を持っておりますが、それらは全て石本来の色。十和田石やビアンコカララ、バルディリオ、クオーツサイトなど、世界中の様々な石を使用して制作されています。
今回の作品の土台部分の強化には、ジェスモナイトAC730が使用されています。
碧さんがジェスモナイトに出会う以前は、土台の強化材としてモルタルを主に使用されていたとのことです。今回の作品群のように薄い形状の場合にはモルタルでは強度的に不安があり、ジェスモナイトAC730であれば薄塗りでも強度が出しやすく欠けにくいことから、支持体として今回使用されています。モルタルとジェスモナイトAC730との二次接着性は良好で、モザイク石の接着するモルタルとしっかり接合します。
ジェスモナイトAC730を使用するようになってからは輸送時の作品破損の心配も少なくなり安心して使用できる、との嬉しいお言葉をいただきました。
碧さんは、仁和寺の空間を見て展示について想像することができた、というふうに仰っています。まさに作品と空間が一体となった展示です。
古くからある荘厳な建物と、波紋を描いたモザイクアートが共存している美しい展示でした。