佐藤壮馬さんの個展「おもかげのうつろひ」は、2023年4月18~5月21日に銀座の資生堂ギャラリーで開催されました。
本個展は、第16回 shiseido art egg の受賞作展示です。
2020年に豪雨により倒木した岐阜県・神明神社のご神木の破片を3Dスキャンし、本展示の立体作品が制作されました。こちらの制作工程の中に、ジェスモナイトが使用されています。
その町のシンボルとなる大杉が民家を避けて倒木したのち、佐藤さんは実際に何度も町へ足を運び、3Dスキャンと写真撮影でそのご神木を記録していきました。
大湫町という場所において人々の生活のひとつとなっていたご神木は、新たな形で立体作品へとつながってゆきました。
苔が覆い木の皮がめくれていく自然の樹木が、ジェスモナイトによって存在を変えて現れました。
物質としては全く別のものですが、そのご神木をはじまりとして丁寧に記録・制作され、展示を見上げると穏やかに包まれている感覚が沸き上がってきます。
ギャラリーの入り口傍からチラチラと覗くその姿と、展示エリアで見上げるように感じる空間とで、異なる空気を感じます。するりと穏やかで美しく見えるようですが、その場に立つと力強さを感じました。
自然の中に立ち上がった樹木の倒壊もまた、自然による力で起きてしまったことです。
そしてその存在を別の形にするために足を運び作品として姿を変えて残すことも、大杉と生活を共にしていったことも、とてつもなく自然の中の一部のように思えます。
作品の柔らかで優しい印象は、そんな部分からも来ているのかもしれません。