中根唯さんの作品「絵の宿木」。
すでに廃屋となった家の周りには、何かが寄生するように身を寄せています。
こちらは「百年後芸術祭 内房総アートフェス」(2024年3~5月 千葉)、市原市の月出工舎(旧月出小学校)会場で初めて発表された作品です。
百年後芸術祭の会期は終了していますが、中根唯さんの本作品をはじめ月出工舎にある作品の多くは、常設作品として会期後も恒久展示されています。
屋根の裏にはハチの巣の跡が連なり、破れた壁からは動物たちが入って来ることもある家屋。
ここを作品の一部にすると決めた際、中根さんは「この家と共存する形」を構想されたそうです。この不思議な白い塊が呼吸しながら家にくっついているようでした。
家の半分を覆うようにしての制作は、想像以上に大掛かりな作業だったそうです。終盤は、材料を混ぜながら大人数での作業になったとお話ししてくださいました。
屋外耐久性のあるジェスモナイトAC730を使用した本作品が、どのような形で姿を変えていくのか、または保たれ続けるのか。
まさに「共存」というテーマに沿って見守りたくなる作品です。
ぽっかり空いた穴、軒下に広がる不思議な白い塊。
遠目に見てもその奇妙な雰囲気は圧巻ですが、月出の森でゆっくりと観察するのも贅沢な時間となりました。
▲同会場に展示されている『出る月の絵たち』
こちらは制作の合間に収穫した夏みかんを型どりし、月出で見かけたカメムシを描かれたそうです。「絵の宿木」と同様に、こちらにも共存・共生のコンセプトを感じました。
作品は常設作品として、今も月出の森にいます。
季節や時間の移り変わりとともに歩んでいく作品に、どのような形で再会できるのかとても楽しみです。