鈴木悠哉さんの個展「ARCHAIC FUTURE」が、北海道のモエレ沼公園で開催されました。
鈴木さんは札幌・ベルリンを拠点に活動されており、都市を巡り、普遍性な形や記号化をテーマに制作をされているアーティストです。
展示会場であるモエレ沼公園のガラスのピラミッド(イサム・ノグチ設計)の開館20周年の記念に際し、2023年7月22日~8月27日の期間に鈴木悠哉さんの個展が開催されました。
本展示のいくつかの作品で、ジェスモナイトが使用されました。
都市や人の暮らしの中で生まれてきたものが、抽象化・記号化された姿で目の前に現れています。
それは意図的に作られた建築物や歴史の中で発明された物だけでなく、生活の中に入り込んでいるために普段は意識の外にあるようなものも含まれます。たとえば街角に置きっぱなしにされた椅子、いつも乗るバスの車体の端、誰も直さないままの看板。それらは意識の外にいても世界を作っています。
作品がそれぞれの場所に点在していながらも、「線」「枠」という存在が展示空間をさりげなく仕切り、場に抑揚が生まれています。つるりとした人工的なそれらをしかし無感情とは思えないのは、人が暮らしていくために意味を持って作られたものの断片を元として、この立体作品や光が作り出されているからなのかもしれません。
一方で、このレトロフューチャーで柔和な優しさと、サイケデリックな色が同居している面白さもあります。まるみを帯びた柔らかな形の作品が、薄暗くなった中で工場夜景のように主張のある色と共存している様子も心惹かれます。
そして勿論、形そのものの魅力の強さ。
神秘的な空間のなかを散歩をして好きな景色を発見するような嬉しさもあり、立体作品の造形の細部を発見するのも贅沢な時間です。
目に入る光の印象や曲線が未来のようでありながら、
どこかで過去を思わせる不思議な展示「ARCHAIC FUTURE」。
もし遠い未来に私たちの都市が滅びたら、さらに先の未来の考古学者たちにこの作品群を発掘してほしいと感じます。