テーブル天板制作・初芝立命館中学校ワークショップ

 

初芝立命館中学校・高等学校 さま エントランスホール改修工事でジェスモナイト製のテラゾ天板が採用されました。テラゾ柄を作るカラフルなフレークもジェスモナイトを使ってゼロから制作しましたが、今回はそれをワークショップで中学生たちに作ってもらうという素敵な試みもありました。テラゾ試作から本番の成型、そして完成までをレポートします。

Terrazzo prototyping
テラゾ実験と試作

本プロジェクトの設計を担当され、ジェスモナイトのテーブルトップ制作を依頼いただいたnLDK一級建築士事務所 さまより、検討している空間プランやイメージをお伝えいただき、まずは小さいサイズからジェスモナイトAC100を使ったテラゾの試作パネルを制作します。

途中でnLDK一級建築士事務所 建築家の近藤さまより「生徒さんの思い出の品も一緒にテーブルに埋め込んでみてはどうか?」という楽しいアイディアも出たため、試しに鉛筆を埋め込んでみたサンプルを作成したものがこちらです。この案は採用になりませんでしたが色々試してみる工程は楽しいものです。

ジェスモナイトAC100のテラゾは中に入れるフレークもジェスモナイトAC100を使って自由に作れるため、ビビッドで鮮やかな色を作ることができるのが特徴です。(中に入れる種石はジェスモナイトで作ったもの以外に石や貝、廃材などの別素材も入れられます。)今回の配色は「レインボー」をテーマに、中学校の校舎で使われているレインボーカラーを建築家の近藤さまが現地で集め、その中から基本色が選ばれています。決まった色はDICナンバーで色指定を頂き、指定の通りにジェスモナイトを着色します。乾燥時と濡れ色では色味も変わってくるため、テーブルトップとしての完成形、コーティング後の濡れ色状態に色を合わせています。

決定した4色の基本カラーはこちらの「赤・黄・緑・紫」です。

Workshop in the school
中学校でのワークショップ

テラゾの基本デザインが固まり、2023年2月に初芝立命館中学校の美術室でワークショップを開催させていただきました。入試などで慌ただしく、コロナ対策の制限も大きい時期だったことから、参加者は20名程と小規模な開催となりました。しかし中学生・高校生だけでなく先生方や工事施工担当スタッフさんも参加されるなど「空間を作る人たち」と「空間を使う人たち」が一緒に手を動かす楽しいワークショップとなりました。

空間設計のコンセプト

最初にエントランスホール改修工事のコンセプトについて学びました。nLDK一級建築士事務所の近藤さまより今回のコンセプト「Versa”TILE”」(多様性、多用途、多目的などの意味をもつ「Versatile」という言葉と、エントランスホールで象徴的な「TILE(タイル)」とを組み合わせた造語!)についての説明を聞きました。今ある空間を完全に上書きして変えてしまうのではなく、既存の柱やタイルの良さを活かしながら、明るさをプラスして生徒たちが思い思いの使い方ができるように、と考えられたデザインです。ジェスモナイトのテラゾ天板はカラフルな色を使ってVersatileの「多様性」を表現しつつも、空間全体と調和する役割が求められます。

ワークショップ作業では最初にAC100を使ってコースターを作りました。「使う人が嬉しくなるコースター」というお題を出して、本番テーブルのミニチュア版ともいえるテラゾコースター自分たちで作ってみます。生徒たちは「炭酸飲料に合いそうなコースター」や「お母さんが仕事を終えてゆっくり紅茶を飲むときに使うコースター」など、それぞれにコンセプトを考えて、誰がどんなシチュエーションで使うのか想像しながら配色を考えてみます。

ジェスモナイトカラーフレークをつくる

さて、次はいよいよ実際にエントランスホールで使われるジェスモナイトテラゾのカラーフレークを作っていきます。
多様性を象徴するカラーフレークですが各自が好みでバラバラに色をを作るのではなく、今回のテーブル配色の設計意図と理論の説明を聞いたうえで目的にあう色を自分たちで考えて作っていきます。

テーブルには「赤・緑・黄・紫」と4色の基本パターンがあるので、色ごとに担当チームを分けました。すこしづつ違った色を加えることで、それらが集まった時に単色よりも深みある色を生み出すよう、色相・彩度・明度を少しづつ変えて色を作っていきます。チームメンバー同士で作る色が似すぎないように相談しながら作っていきました。

固まったジェスモナイトAC100の板は、硬くなり過ぎないうちに細かく砕いていきます。ちょうど良いタイミングで砕くと軽い力でパリパリ簡単に砕けるので気持ち良い工程です。しかしタイミングがちょっと遅れてしまうとジェスモナイトの強度が一気に上がり、割るのが大変になるので手早く割っていきます。

できたばかりのカラーフレークは湿っているので、しっかりと乾燥させておきます。

ワークショップで生徒さんが作ってくれたカラーフレークは色に深みを出すために少しずつ色を変えたカラーフレークでしたが、それ以外に大量の基本色カラーフレークが必要だったのでこちらはジェスモナイト倉庫で制作を行いました。制作したフレーク総量は全部で75kg分です。

Making Jesmonite terrazzo tabletops
ジェスモナイト天板の制作

大型のジェスモナイトAC100テーブルトップの制作は、東京の原田左官工業所 さまに制作していただきました。原田左官さまは、新しいテクスチャや技術を取り入れてこれまでにない表現を追求し続けるプロ集団。左官材として事例のあまりないジェスモナイトにも意欲的に取り組んでくださっています。(以前のワークショップの様子はこちら

制作するテーブルは約700mm角の正方形と約700mm × 2300mmの長モノの2種類で、全11台。型枠は木製で型の上面がそのままテーブルトップの天面になるイメージです。天板の小口面は50mm厚ですが、50mmすべてがジェスモナイトAC100で埋まっているのではなく、内側に木の板(フラッシュパネル)を入れるためジェスモナイト自体の厚みは10mmとする計画です。内部パネルはジェスモナイトとの密着性を高めるために凹凸のあるプライマーが塗布されています。

ジェスモナイトAC100のリキッドとベースを攪拌した後で、生徒たちが作ったジェスモナイトカラーフレークを投入してさらに混ぜます。正方形のテーブルトップは1枚あたりAC100を約15kg使用、全体の20%がカラーフレークです。

混ぜ終わったらジェスモナイト液を一気に流していきます!
ドバーーー。

コテやヘラを使って表面を平らにならしていきます。木型の外枠は成型するサイズちょうどの高さに作られており、そうすると真横から見ることで水平が出ていない個所が発見しやすいそうです。なるほどのプロのコツです!
型の周囲に振動を与えることで、型の隅や奥までしっかりとジェスモナイト液を流れ込ませ、大きい気泡も振動で抜いていきます。

長物テーブルも先ほどと同様の手順で一気にジェスモナイトを流していきます。サイズが大きいので複数人で手分けして流し込みを行っています。こちらは1枚あたり約45kg分のジェスモナイトAC100を使用。作業時間にゆとりを持つため硬化遅延剤も使っています。

ジェスモナイトが固まったら、次は一番大変な削りの工程です。まずは天面をグラインダーで2mmほど削り落としていきます。削っていくことで中にあるカラーフレークがきれいに見えてきます。

ポリッシャーでさらに研磨していき滑らかな表面を作っていきます。横から光を当てることでキズが良く見えるそうです。

天面が削り終わったら、木型から外して側面も同様に研磨していきます。

続々と仕上がってきたジェスモナイトテラゾのテーブルトップ!

研磨の後には表面の気泡埋めとコーティングの工程があるのですが、残念ながらこの部分は画像がありません。
表面を削ることによってジェスモナイト内部にあったピンホールが沢山出てくるため、ジェスモナイトを使ってこれまた職人技で素早く気泡を埋めてから再度研磨して滑らかにします。塗装は、カウンターなどのコーティングでも使用される食品安全衛生法に適合した木部用の水性ウレタン塗料をスプレーガンで塗装しています。塗装したテーブルはしっかりと養生した後、梱包して大阪の現場へと運ばれました。

Install
ジェスモナイト天板の現場設置

現場である大阪府堺市の初芝立命館中学校・高等学校さまにジェスモナイト天板が無事到着。全体工事を担当されているのはロウエ株式会社 さま、大阪・神戸・京都のブルーボトルコーヒー店舗施工などを手掛けておられます。デザインや設計の意図をしっかりと汲み取って細部まで施工に落とし込む精鋭揃いのプロ集団です。到着したテーブルトップと下部タイル家具との収まりをチェックしていきます。サイズが少し合わない箇所は現場で天板を削って微調整しました。

nLDK一級設計士事務所さまによるジェスモナイト天板仕上り確認。サンプルサイズでは色々と見ていただいていますが、実際のサイズになると印象や見え方も異なってくるのでドキドキするタイミングです。想定されていたよりも少しテラゾの色が強く見えていましたが、広い空間の中だと逆にちょうど良い強さとなり、無事OKいただけたので良かったです。今回 赤・黄・緑・紫と4色のテーブルすべて同じ配合率で作成していますが、膨張色の赤はかなり強く色が感じられたりと、色によって印象が変わる点もサイズが大きくなることで顕著になりました。こういったケースでは、同デザインでも色によってフレーク配合量を変えるなどの微調整ができるとよいなと思いました。

ワークショップもお手伝いいただいた初芝立命館中学校・高等学校の美術科教諭(中央)と一緒に、天板の仕上がりを確認するnLDK一級設計士事務所の近藤さま。

Finish
リニューアル工事完成

2023年4月初旬、遂に初芝立命館中学校・高等学校 一号館エントランスホール改修工事が完成しました。

窓際のふわりと柔らかく光を通すファブリックも、よく見るとタイルの柄をしています。テキスタイルは jyu+ さんが担当をされています。

工事完成後は生徒たちが自由に空間を使ってくれている、とnLDKさまを通じて初芝立命館さまからお聞きしました。ワークショップに参加してくれた生徒さんには作ったカラーフレークの欠片を少しだけ持ち帰ってもらったので、タイミングがあれば自分の作ったカラーフレークをテーブルの中から発見して、モノづくりの工程を想像したり、テーブルに愛着を感じてくれていたら大変嬉しく思います。

大変面白いプロジェクトにお声がけくださったnLDK一級建築士事務所さまをはじめ、ワークショップをお手伝いいただいた初芝立命館中学校・高等学校の美術科の先生方、参加してくれた生徒の皆さん、ジェスモナイト天板制作で全面的に対応いただいた原田左官工業所さま、最終的に美しく現場に設置して仕上げて下さった株式会社ロウエさま、そしてご協力いただきましたプロジェクトに関わるすべての皆さまに心より感謝申し上げます。

プロジェクトクレジット

施主:初芝立命館中学校・高等学校
設計:nLDK一級建築士事務所
全体施工:株式会社ロウエ
ジェスモナイト天板制作:有限会社原田左官工業所
試作・フレーク制作、ワークショップ設計:シィアンドビィ株式会社